Four you ~2+2=4=2×2~
「…先生と付き合うのは…ちょっと厳しいと思う」
「…」

できれば聞きたくない言葉だった。だけど、驚くほどにすんなり受け入れられた。その驚きに何も言えないでいると、しかし、二人には私の気持ちは伝わらない。

「詩音にとっては辛いことかもしれないけど…生徒と先生が付き合うなんて、それこそ小説とか、漫画の中でしか起きないことなんだと思う。詩音の小説に現実味がないって言ってるわけじゃないよ? だけど…今のままだと、詩音は付き合えないんじゃないかなって、アタシはそう思う」

先生と私がそうなるためには、生徒と先生という壁を乗り越えられる程度のものが必要。そんなのは分かっていた。だから、小説にもそれを乗り越えるすべを書いたつもりだ。

だけど頭で分かっているばかりだから、他から見れば無理なように見えるのかもしれない。実際の行動を起こしてないから、片想いにしか見えない。

「…そっか…そうやんな」

無理そうだって、私が気づかないわけがない。叶わない恋心にケリをつけるために聞いたんだ。そう。諦めるんだ。先生じゃなくても、いい人はもっといる…はずだから…。

「堪忍な、暗くなってもうて…さ、何か楽しい話しよう」

無理して笑っている人を見るのは、何度かあった。だけど自分自身がそういう人になるのは、初めてのことだった。

「詩音…」
「無理しないでよ?」
「無理? そんなんしてへんから安心して」

二人に心配を掛けるのは、望んでいるわけがなかった。二人が負うはずの心配や不安を、私の心に刻みつけた。
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