Four you ～２＋２＝４＝２×２～
風間剣斗(カザマ・ケント)というその男子生徒は、杏樹の同級生であった。あの事件が起きるまでは杏樹のことなど気にも留めていなかったが、写真を見た時から違和感を感じ、そうして真相にたどり着いたのだという。

「…風間くん」

そして剣斗は、杏樹のたった一人の友達になった。もっともその時は、杏樹からすれば恩人で、剣斗からすれば「放っておけない奴」だった。平均値的に見れば「友達」というわけだが、その関係も、私は揺るがせた。

「話って…何？」

二人が密会するのは、いつも校舎裏だった。杏樹にとっては処刑場だった校舎裏だが、剣斗と一緒にいるときだけは、素直にそこにいられた。

「…そこで止まって」

そう言って剣斗が指示した場所は、校舎の壁だった。…もしかして、流行りの壁ドン…？　そう思った杏樹は、自分の読んでいた恋愛小説の中だけだったその光景が現実になることへの期待に胸を膨らませ、紅潮していた。

…だがそんな惚気話は、誰も欲しがってなどいない。

「…悪く思わないでくれ、下村」

固く握られた剣斗の拳が、杏樹の顔面に直撃した。

「あぐっ…風間くん…？」

杏樹の目から、再び光が消えようとしていた。

「こうなりたくなかったら、もっとクラスメートと仲良くしてりゃよかったんだよ。入学式で休んだ？　そんな高校生、全国にお前だけってわけじゃないだろ？　…ビビったお前が悪いんだよ！」

もう一発、そしてもう一発。何度も何度も、剣斗の拳や足は杏樹の体を痛めつけるのに使われた。

そして、杏樹が恐れていた最悪の事態が、幕を開ける。
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