Four you ~2+2=4=2×2~
「…というわけで、詩音ちゃんの努力によって、無事台本が完成しました~!」

耶色先輩はそう言うと拍手した。先輩や、さらには同級生の四人までもがそれに続いた。…全く、私の立場はどうやら「作家先生」で確定してしまったようだ…。でもここに入った当初の目的である「勝ち組になる」ということは達成できそうだし、まぁいいか。

「なので今回は一回台本に目を通して、役を決めたいと思います!」

私自身も、台本を一から全部通して読むのは初めてのことだった。私以外の小説を書いている人はどうなのかは知らないが、私は基本的に、書いた後にあまり推敲をしないタイプなのだ。面倒なのもあるし、一刻も早く次の作品を書きたいという思いもある。だけど書いてからしばらくすると、本当に作品が成立しているのか、不安になることが時々ある。今もそうだった。

「…」

しかも今回は、演劇部の台本という、普段あまり書かない形式のものだ。不慣れなゆえのミスもきっと多いことだろう。本を書くことに集中することはあっても、本を読むことにここまで集中したことはなかった。…いや、中学校の頃のあの読書を「集中」に入れるなら、数多くの集中をしてきたことになるのだが…。

「皆読めた?」

先輩達はもう読み終わったのだろうが、私はミスをしていないかどうかがやたらと気になってしまい、まだ半分も読み終わらずにいた。

「ちょっ、ちょっと待っとって下さい…ミスしてないかどうか気になって…」
「心配しなくても大丈夫よ。ミスなんてなかったから。あたしの目に見えなかったんだから、間違いないわよ」
「YES! MISSはなかったネ!」
「わたしも、先輩方と同じく、ミスは見つけられなかったから…多分大丈夫だと思うよ、詩音ちゃん」
「…気にしすぎだ…」
「そんなに根詰めてどうするんだよ。ミスがあったってその場で直せばいい話だろ?」
「私達だって、そんなに頭固くないから」
「ミスがあっても、どうにかするって。ね、耶色先輩?」

若奈が先輩に尋ねる。数秒後、私の肩に手が置かれた。

「ボク達、詩音ちゃんのこと信頼してるんだから。詩音ちゃんだって、ボク達のこと信頼してよ」

…やはり中学校の頃にやっていた現実逃避の読書は、私にとっては「集中」だったのだろう。あの頃の風景がありありと思いだされて、その頃の私が、ここにいる皆に声を掛けられたような心地がした。ひどく驚かれたけれど、私は泣いていた。
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