Four you ~2+2=4=2×2~
その日は不思議な夢を見た。

「…来いよ」

どこかで見たような男性に手を引かれ、どこまでも走っていく。ただそれだけの夢だった。夢の中の私は、その男の人が誰なのかも、ここがどこなのかも、今がいつなのかも、何故走っているのかも、疑問に思わなかった。まるでその人に全幅の信頼を置いているかのように、私は走っていた。

「…起きてよ、詩音~」
「起きて~」
「…ん…」

走っていた途中で何気なく聞こえたその声が、翌朝の現実の声だった。

「あ…映奈…若奈…」

寝ぼけ眼に映る二人は、私の顔を覗きこんでいた。

「どないしたん…?」
「もうすぐ一時間目始まっちゃうから…」
「そろそろ起きないと、でしょ?」
「…もうすぐ一時間目…?」

映奈の言葉に引っ掛かり、枕元にある時計を見る。

「…ひゃぁぁぁぁぁ!?」

六時と定められている起床時間から、二時間半が過ぎようとしていた。

「ね、寝坊やん、こんなん!?」

一時間目は八時四十分にスタートするのだが、あと十分足らずでもろもろの準備を行うことなど無理だった。

「…って、朝ご飯も食べてないし…ちゃんと起こして…」
「急がなくてもいいよ、詩音は。今日はゆっくり休んでて、だって」
「えっ…?」
「詳しいことは、後で誰かに聞いてみて。じゃ、アタシ達はそろそろ行くね」
「ちょっ…」

あっという間に、ドアが閉まった。
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