Four you ~2+2=4=2×2~
「…これは?」
「この飴ちゃん、プリン味やねん。珍しいやろ? 食べてみ」
「おおきに、ありがとうございます…」

包み紙をほどき、口に入れてみる。本物のプリンにはそう及ばないけれど、あのカラメルとカスタードに似たハーモニーが、舌の上で奏でられる。

「…今の詩音ちゃんって、その飴ちゃんみたいな感じやねん」
「飴ちゃんみたい…?」
「色々迷いがあるってこと。自分はここにおっていいんか、おったらあかんのか。誰かに助けてもらった方がええんか、一人でやってみた方がええんか。そんな感じで、詩音ちゃんは何かをやろうとすると、どうにも考え込んでまうねん」

私には分からない私を、おばちゃんは私の意識に引き出してくれた。ある哲学者が、自分には分からないのに他人には分かっている自分を「盲点の自分」と呼んだが、言い得て妙だ。私自身ではどうやっても、それを知ることはできない。

「まぁ深いこととかは言われへんけど…そんなに考え込んでずるずる引っ張ったりせんと、昨日は昨日、今日は今日、明日は明日やって思って、頑張りや」

おばちゃんは肩にポンと手を乗せてくれた。

…中学校の頃の話をするのはこれで何度目か分からないが、もう一度話そうと思う。

あの頃、私は一人だった。学校にいる間、一言も声を発しない日だってあった。だから当時の私には、一人だけでも生きていけるという意識がどこかにあった。

それが違うという「答え」は…私の周りにいる皆が、証明してくれていた。

だから…一つ決めたことがあった。

あの頃の私と同じような経験をしている人に。

あの頃の私と同じようなことを考えている人に。

同じ岸にいたこともあった私から、助け船を出すために。

次の小説…いや、今書いている、色んな人が呼んでくれている小説には、その答えを描く。それが、私の使命に思えた。
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