Four you ～２＋２＝４＝２×２～

その事件は「家賃詐欺」と呼ばれていた。

道を歩いていると、突然ある男から「落とし物ですよ」と声を掛けられる。それを受け取ると、自宅に一通のハガキが届く。その内容は、家賃を払えというシンプルなものだ。その手紙を受け取った人は、当然家賃を指定された口座に振り込む…。

しかし、家賃を払った口座は実は詐欺師のもので、払った数日後に、本物の家賃催促の手紙が届くのだ。けれどもすでに家賃を払ったその人は大家にその旨を話し、大家は家賃を徴収できずに終わる。

そして、ここで詐欺師の標的は、大家へと移ることとなる。

家賃を徴収できずに悩む大家に、さらに追い打ちがかけられる。警察を名乗る団体から、書面が届くのだ。

「あなたは家賃の不正徴収を行っていますので、以下の口座に罰金を振り込んで下さい。お払い頂けなかった場合は、詐欺罪の疑いで署まで出頭して頂くこととなります」…このような内容のものだ。

大家としても、前科持ちとして残りの人生を生きて行くことは嫌なことである。そのため罰金を振り込むのだが…その口座も詐欺師のもの。

これが、「家賃詐欺」の大まかな流れだ。

実際に顔を出さなければならない人物は一人だけなので、組織的犯罪である可能性は低いと見られていた。しかし組織が存在しないということは、日本に住む一億三千万人の中からその詐欺師一人を見つけなければならないということなので、捜査は難航していた。二年前から都内各地で起きているこの事件、分かっているのは、最初の男がどうやら都内にいそうだということ、それだけだった。

そんな未解決事件に、澄玲が立ち向かうことになった。

今まで数々の未解決事件を解決に導いてきた澄玲だったが、ここまで大がかりかつ難儀な事件を相手にするのは初めてだった。呼吸を意識してしまい、息苦しくなる。そこに能力のせいでまとわりついた苦い記憶が付随してしまうから、澄玲としてはたまったものではなかった。