Four you ~2+2=4=2×2~
それでもこれまで事件を解決してこれたのは、やはり運というものがあってのことだろう。澄玲がその詐欺師を発見したのは、捜査を始めてからわずか一カ月後のことだった。

ビルの屋上に立ち、街を見ながら神経を研ぎ澄ませる。すると、澄玲の口が不意に動いた。

「『じゃあいつも通り、落とし物を拾ってあげるとするか』」

ついに捉えた詐欺師の言葉に、思わず体を震わせる澄玲。すぐに眼下の風景を覗くと、米粒程度の男性が米粒程度の女性にハンカチを渡している姿をどうにか目に入れられた。

すかさず捜査本部に報告する。

「南西の方角、カフェ『モノクローム』の近くで家賃詐欺の詐欺師らしき男を発見しました。目で追える限りで男の行動を報告するので、ただちに急行して下さい」

視界に入る全ての人間が対象となる澄玲の能力。詐欺師の言葉を発見するのは困難なことだが、一度見つけてしまえばあとは目で追うだけでいい。言うなれば、捜査の実に八割は終わったと言ってもいいだろう。

数分後、目で追っていた男のすぐ傍にパトカーが停まるのが目に入った。

「遠山、お前も来い」

先輩刑事の印藤頼久(インドウ・ヨリヒサ)に電話口で呼ばれ、現場に急行した。しかし、本当の闘いはここからだった。

「だから、普通のことだろ? 『落とし物を拾ってる男を見た』って、そんな目撃証言だけで犯人扱いされちゃたまったもんじゃないっての…」
「それだけじゃないと何度も言ってるでしょう」
「あ? 俺の心の声を聞いたって話か? 誰が信じるかよ、そんなの。警察はいつからファンタジーな組織になったんだ?」

警官たちと争う男の声に、かすかながら聞き覚えがあった。

「印藤先輩」
「おっ、来たか。コイツが、お前の言ってた犯人だ」

頼久が顎で指すその人物の顔を見たその瞬間、澄玲と男、二人の表情がまるで一変した。
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