Four you ~2+2=4=2×2~
「…まあ、仕方ないわな。その能力のせいで負ってきた過去は…俺にも分からないくらいに壮絶な過去なんだろう」

会議室の窓から外を眺める頼久。逆光のせいだろうか、澄玲には、頼久の背中が全て影に見えた。

「…でもな、遠山。お前のせいで捜査が振り出しになったわけじゃない。逮捕に比べたら微々たるものだが、お前は確かに情報を持ってきてくれた。家賃詐欺師の名が分かれば、捜査は急激に楽になる。知り合いじゃなきゃ、名前すらも分からなかった」

窓の外に向けられていた頼久の目が閉じられる。

「それに、もしお前が知り合いじゃなかったとしても、鷺沢を逮捕できたって確証はどこにもない。囲まれても逃げるような奴だ。きっと別のタイミングで逃げようとしてただろう。もしそうだった場合、せっかく進みかけた捜査が、今度こそ振り出しに戻ってしまう。…そう考えたら、俺達はお前に感謝しないといけない」

振り向き、礼を言おうとした頼久。しかしそこに、澄玲の姿は無かった。

「遠山!」

急いで外に飛び出すも、澄玲は見つからなかった。

…その頃、澄玲は先ほどのカフェ「モノクローム」にいた。

先輩刑事の話の途中で退席するのは辛いことだった。だがそれよりも、自分に心を開き、話を聞いてくれた頼久の背中にも影を見出したのが、耐えられなかったのだ。

「…」

震える右手でスマホを持ち、電話する。澄玲は、中学時代に登録していた開司の電話番号が今でも開司のものである可能性に懸けていた。

「…」

その耳は、すでに音声ガイダンスを聞く準備を整えていた。しかしながら、澄玲の耳に届いたのは、生の人間の声であった。
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