Four you ~2+2=4=2×2~
「…もしもし」

電話の声は本人の声ではないのだが、澄玲には、その声が開司のものであると信じられた。

「…鷺沢」
「お前、俺の電話番号まだ持ってたんだな」
「持ってなくても、捜査に必要ならそれくらい調べるわよ」

澄玲は自分の言葉に一本取られた気分でいた。

「…家賃詐欺の犯人、鷺沢だったんだね」
「ああ」

間髪をいれずに答えた開司に、思わず戸惑ってしまう澄玲。

「…自分が何してるか、分かってるの?」
「分かってる。詐欺罪。重大な犯罪だ」

開司は澄玲と会話しているというよりも、澄玲の言葉に関連する単語をただ羅列しているだけだった。

「分かってるなら、どうしなきゃいけないかも分かるよね?」

手も心も震えているのに、声だけは驚くほどに冷静だった。

「ああ」
「じゃあどうして逃げたりなんかしたのよ!?」

周囲の目が一斉に澄玲に向けられる。

「…お前がいるとマズいからだ」
「何がよ?」
「…今、どこだ?」
「…『モノクローム』ってカフェ。さっき近くを通ったでしょ?」
「ちょっと待っててくれ」
「えっ?」
「今から向かう。信用できないなら、この電話を繋いだままにしていてくれ」

そして、十五分後。電話を右耳に当てたままの男が、澄玲の前に座った。
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