押しかけ社員になります!
Hop

約束は果たした。いや、まだ結果は出ていないんだ。
私は今日、部長の分のお弁当を持参して来ていた。
だけど問題は山積み。

さて…、まず、今日で良かったのか。
良かったとして、どこで渡せば良いのか。
朝、会えるかどうかも解らない。持参している事実を伝えられずに、持ち帰らねばならないかも知れない。
食堂でって言っても、タイミングがあるし。
デスクで小さく唸っていたと思う。

「西野!」

うわっ、奇跡のような声が…。

「は、はい」

…まただ。また朝っぱらから部長に呼ばれて…。
何かしたのか、みんながそんな目をしているように見えた。解らないように溜め息だってついている社員も居た。
いや、いや、違いますからね?
わたくし、何一つ、叱られる事など、まだ致しておりませんから。

「西野‼何してる、早く来い」

「あ、はい」

え、何?会議室に直になの?
部長は何かファイルを手にしていた。
んー?最近、何か提出したっけ?確かまだ私用の物も出していないはずだし。
…身に覚えが無い。
まさか、本気のお叱り?…。

「西野っ、何してる。早く来い」

「は、はい」

頼むから早く行ってくれよって、視線を感じる…。はいはい、行きますから。
早足で会議室に向かう部長の跡を追い掛けた。


シャッ。【使用中】に換わった。

「座れ」

「…はい」

何だろうか。

「…西野」

「…は、い」

「すまん、…大きな声を出して悪かった。いつも通りにしないとマズイと思ってだな。
これは呼び付けのダミーだ。
何も持たず会議室に入るなんて、尚更マズイからな」

「え?」

あ、あ。…はぁ、…な~んだ。なんだぁ…良かったぁ。心臓に悪い…。はぁぁ。ヘナヘナと勝手に力が抜けた。
…いや?良かったじゃない。では、この呼び付けは何?
落ちるように腰掛けた。ガタガタと椅子が揺れた。

「お、わっ、西野っ。大丈夫か?…大丈夫か?
本当に悪かった。
そんなに驚かせたか?
ところで、西野のデスクの横に掛けてある紙バッグは、もしかして弁当か?」

「え」
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