押しかけ社員になります!
…言いたくないこと…言わせてしまった。部長…。ここまで言われて何を不安に思う事があるだろう。ただ好きで居させてくれる。偉い人の煩わしい色々なモノには関わらなくていい。
そんなに…先の事まで、思ってくれてたなんて。
「部長、私、部長が好きです…」
「ああ、解っている。今までも、これからもな。そうなんだろ?」
「はい」
「…ところで、西野。俺が将来取締役になる事は知っていたのか?」
「え?」
「…え?」
…。
「あの…、私のは全くの想像です。部長は出来る人ですから、きっと今の役員の方々から嘱望されているだろうと思って、それでです」
はぁ、そういう事か…。俺はてっきり、この会社の組織を知ったのかと思った。
「…そうか…ま、買い被りだな。解らん話だ」
………違う。いくら鈍い私でも解る。さっきの部長の言い方だと、間違いなく将来、取締役になる、そんな問い方だった。だから私に確認した。何故知っているのかと。
どちらにしても、公にしてはいけない話だ。…え、待って…。確か、お父様は地位も名声もある方だと言っていたような…。
…部長の離婚の話の時の話。でも、お父様とはそれ以来連絡は取っていないようだし。…では、部長は…一体。何物?…。私、知らなくて、済ませていい事なのだろうか。
…。
でも、部長のさっきの言葉が全てだ。部長がどこの誰だろうと何者だろうと。…うん。だから、いいんだ。
「西野…。百面相は終わったか?」
まただ。また顔に出てたのね。今回は仕方ない。問題が大き過ぎたもの。
「はい。終わりました」
「…それで?」
「それで?別に何も無いですよ?部長を信じていますから。そう部長が思わせてくれましたから」
もう、がたがたと世迷言は言えない。部長とつき合うという事はそういう事だ。
「ん。そうか」
この場で敢えて言わなくても、話す機会は作る。聞かれなくても俺から言わなければいけない事だ。
「あの、では、戻ります」
「ああ」
あ、ま、いいか。別に小細工しなくても。ファイルを持たせようと持っていたんだが。俺達の行動が怪しいと思われても問題は無い。
ドアに向かっていた西野が振り向き戻って来た。
「部長、それ、預かります。ですよね?」
「おお、じゃあ、持って行け」
「はい。失礼します」
随分と冷静じゃないか。いつもの西野か…。