押しかけ社員になります!

もう、実質、何も心配するモノは無くなった。だって、あそこまで言われたら、何も聞く事は無い。何があってもこのままの私でいいって事よね。…部長は私に凄く甘いと思う。

そんなに何もしないでいい役員の奥さんて居る?何とかのパーティーとか、よく夫婦で出掛けたりする行事だってあるじゃない。そんな事からは無縁のところに私をおいてくれるの?て事よね。結婚したとしても、私は普通の奥さんでいいって事ですよね。
…。
それでいい訳が無い。大事な事はある。…解ってる。
…。
…それにしても。仮想プロポーズ?みたいなモノよね。今日のあれは。部長の奥さん。青柳…和夏って事?…中学生か…。こんな事考えてるなんて。そうよ、中学生よ。好きばっかりで何も考えてなかった。それにまだ清い交際なんだから。…。
部長…。週末には限らず会いたいな。でも部長は日々忙しい…。


今日だって、私はもう家に帰って来ていて、こうして部長に思いを馳せている訳だけど。部長はまだ仕事かも知れない。
まだお仕事ですか?そんな事を問うメールをしたところで何にもならない。きっと仕事なんだもの。聞かずに押しかけるのも…。都合というモノがある。
…私、いつから押す事に遠慮してるんだろう。


ピンポン。え?
玄関に走った。

カチャ。

「部長…部長っ!」

「おっと、西野、どうした…」

嬉しくて思わず抱き着いていた。

「部長、思いが届きました。部長に会いたいなって、まだ仕事かなって思っていたところだったから。今日グダグダ迷惑をかけて、考えてました…嬉しい…部長、嬉しいんです」

私、妙に素直ね…。とにかく会えただけで嬉しい。

「西野…はぁ。俺も会いたくなったから来た。ちょっと前まで会社で一緒に居たのにな。…この有様だ」

少し顔を背ける部長の照れ隠しが何だか可愛い…。

「部長…」

…好き。好き。こんな情けない私だけど…部長…好き。
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