押しかけ社員になります!
本当に思いやりが足りない…。配慮が無い。情けないくらい自己中だ。
「そうか」
「ごめんなさい。こんな時、私から連絡しておけば良かったのに。あの、それで…どうしましょう?」
「待ってる。準備をしてくれないか?俺の部屋に行く支度をしてくれ」
「解りました。今、珈琲でも…」
「いや、…取り敢えず、先に服を着てくれないか。…刺激的過ぎる」
ふぅ、全く、無防備にも程がある。…全く。…。
「うわっ、そうだ、すみません。では少し待っててください」
着て行く服を決めておいて良かった。こんな事になるなんて思いもしなかったけど。あれでも無いこれでも無いと、並べて比べて悩んでる場面では無いものね。
服を身につけた私は、改めて、ソファーに座って待たせている部長に声を掛けた。
「もう少し待って頂けますか?今、珈琲を入れます」
「ん?もういいんじゃないのか?」
でも…。本来ならあまり見せたく無い…スッピンのままだもの。せめてナチュラルに見えるくらいのお化粧はさせて貰いたい。その為の時間を頂きたい。
珈琲を置いた。
「駄目です。まだです」
俯き加減に返事をした。さっき勢いで飛び出した事を思えば、今更隠してもですが…。
「お化粧がまだなんです。あの、待たせてしまいますから、先にお部屋に帰られててもいいですよ?」
「何を今更。ここで待っても、部屋で待っても、待つことに違いは無い。このまま待ってるよ。一人で来させるのも心配なんだから。
俺は今の西野のままでいいと思うけど?本人の気持ちの問題だもんな。気の済むようにしてくれ」
女心、だよな…。
「はい」
…。そんなに塗りたくる訳でも無いけど…、気の済むようにしてくれって…、何だか複雑な気持ち…。…拗ねてしまいそう。