押しかけ社員になります!
目指せ表彰台
*メダル?
今日はきっと一生忘れられない日だもの。自分から機嫌を悪くしたら駄目だ。
「お待たせしました」
「…ん、ああ…早かったな。行こうか」
「はい」
キッチンでカップを洗い、しまった。
部屋の明かりを消す。忘れ物は、無い。
玄関で待つ部長の元へ。
次、この部屋に帰って来る私は少し違う私…。
行って来ますね。変なの…部屋が身内みたい。
鍵を掛けた。歩き始めた。
廊下を進みながら、部長の手が私の手に触れた。自然に繋がれた。
今日もスーツ姿。仕事だったのだろうか。
私の知らないところで知らない部長が行動している。
階段を降りながら思った。部長が待つ部屋に直接向かっていたら、この部長の行為は得られなかった事なんだ。…もしかしたら、部長がここに来てくれた目的は、迎えに来てくれたのかも知れない。
沢山の着信もメールの中身も、確認していないままだ。その中に、迎えに行くって事、あったのかも知れない。これも自惚れかしら。
はぁ、ドキドキする。
今の内からこんな調子で、心臓、持つかしら。
「キャ」
階段を踏み外した。
「大丈夫か?気をつけろ?」
「はい、すみません」
はぁ、ちゃんと歩け私。足まで浮ついちゃって…。
「手を繋いでいて良かった」
そうですね。でも…そのせいでもあるのですが。結果は、そうですね、繋いでいて良かった。
「有難うございました。危なかったです」
「車なんだ。出先からそのまま来たから。あそこだ、あのコインパーキングに停めてある」
部長の車。助手席側のドアを開けてくれた。相変わらずスマートな動き。
「有難うございます」
お礼を言って乗り込んだ。
「精算して来る、待っててくれ」
「はい」
ストッパーのような物が下がる音がした。
思った以上に大きくて、ちょっとびっくりして心臓が跳ねた。
「よし。行こうか」