押しかけ社員になります!
「……部長?」
「ん?」
「今日、帰ろうかと思っています」
「帰るって、どうした?……そうか何か余程の理由があるんだな」
「はい…」
「解った。…はぁ、そうか。聞き分けのいい俺を褒めてくれ」
「部長ぉ…」
「…土曜も日曜も帰さないって宣言しておいたのに、帰られてしまうんだぞ?…寂しいじゃないか」
部長は横向きで正面から私を抱いた。
「あ、部長…」
…どうしよう。
「違うんです。あの……私、…このままじゃいけないって思って。だから帰った方がいいと思ったんです」
「ん?何がこのままじゃいけないんだ?どういう事だ?…本当は良く無かったか…俺がいいって言ったから、違ったって言い辛くなったのか。俺は良くても西野が駄目なら…駄目か…」
「あ、違います。そんな…、それは違います。…むしろ、…良いです。相性…とても良かったです、と思います」
部長のお陰だと思いますが…。
「なら、どうした?このままじゃいけないとはどういう意味だ」
「…あの、……溺れてしまいそうだからです部長に。底無しに…」
……恥ずかしい。
「西野…」
「今ままでも勿論好きでした。何も無くても好きでした。大好きでした。それで、………シて、…良くて。心も身体も好きになって、部長にのめり込んでしまいそうなんです。ううん。もう、のめり込んでいます。だから、このままでは自分がどうにかなってしまいそうで、解らなくなりそうなんです」
「西野…だったら帰るな。いいから俺にのめり込んでくれ…溺れてくれ。そんな事が理由で帰るって言うなら帰さないぞ。今は夢中になる…そんな時だ。そう思えばいい。
好きになったら、後は自然に任せたらいいんだろ?西野が言ったんだ。それは言葉であれ、身体であれ、共通だろ?好きは勝手に育って行くものなんだろ?
抑えたところで苦しいだけじゃないのか?相手に嫌われているとか、届かない恋をしているとか、そんなんじゃない。互いに好きなんだ。おかしくなるくらい、一緒に居ればいいじゃないか。…一緒に居よう」