押しかけ社員になります!

「…嫌になったか?」

嫌とか、そんな問題ではない。普通、そんな聞き方はしないのではないの?
でもそういう聞き方をする部長には、私の思い、…解っているのだろう。一般的な女子なら、知らなかった事が御曹司だったなんて、爆発的に喜ぶのでしょ?
私は普通の出来る部長だと思っていた。その方がいいとは聞いた今でも思っている…。
何もない…普通の部長がいい。

「部長の事は嫌になったりしません」

でも…。だったら、余計、半同棲生活みたいな事、出来ないよね…。部長の体面があるもの。
思わずハッとして口に手を当てた。

私…得体の知れない女が…、マンションに出入りして…大丈夫なのだろうか。…もしかして、もう私の素性なんて、調べられているのかしら。部長のお休みは、何か、動いていたのだろうか…。

「西野?聞いてくれよ?何を思った?」

いや、私が今過ぎった事は部長を信じていないようにも取れる。第一、調べて駄目だと思われたのなら、それなりの話をとっくにされてるだろうし。
まして、男女の関係になるなど…有り得ない。だとしたらどっち?

恋愛だけで終わらせる、そんな関係に?
それとも、結婚を考えている関係に、進んでいいの?
部長は何も変わらないと言った。だから、何も考え方を変えなくていいんだ。

「西野?」

ずっと黙っていては嫌なんだと取られてしまう。

「…あ、正直な気持ちは…、部長が普通の人だったらいいのにと思いました」

あ、私、なんて事を…。そんなのは部長の責任じゃない。
生まれてきた環境なんだから、仕方ない事なのに。
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