押しかけ社員になります!
「やはり嫌か…」
あぁ、どうしよう。どうしたらいいの。でも咄嗟に迂闊な事は言えない。
「いえ、あの、難しいですよね?やっぱり半同棲みたいな話は…」
私、どうして今こんな事聞いてるの?……あ。フワッと抱きしめられた。
あ、…こういうのって、何だろう。言葉と共に、やっぱり行動は安心を与えてくれるモノ。
「…いや。…一生っていうなら、また考えなければいけないが、しばらくなら、問題は無いだろう。…公認の仲になれば。つまり、形で言うなら婚約者だな。そういう仲だと公になれば、何をしようと問題は無い」
こ、こ、婚約者?…なんて…上品な響き…。
私はそんな大層な扱いを受けたく無い…。だけど、何の誓いも無い関係というのはマズイのだろう。どんな呼ばれ方もされたくない。何だか大袈裟な感じがして。
…なんて我が儘なんだろう。
御曹司の恋人と呼ばれるのも嫌。ただ好きな人なんだから。表現で括られたくないの。
…これが身分違いのって事を既に意識してる証拠…。だったら、ただ好きだった頃に戻ってしまおうか…。それは卑怯な考えになる…。相手と心を交わしてからする事では無い。
だけど…、変わらなくていいと言われても、頭では解っていても…、現実に負けそうだ…。
青柳…。ワードを入力して検索したい気分だ。
「…好きなのは好きなんです。ただそれしか言えません」
今は本当に、何をどうとか、…解らない。あるかもしれないと思っていたこと、あまりにも現実が衝撃的過ぎた。