押しかけ社員になります!

う、とうとう、この時間が来てしまったじゃないの。

「西野さん、お昼行きましょう」

「そ、そうね」

ふぅ。いつも通り、いつも通り。
違うのは、ちょっと荷物が多いだけ。平常心よ。


キョロキョロと見渡し、いつもの辺り…、ううん、いつも以上に空いているテーブルに辿り着いた。…はぁ、疲れる。
あ、お茶…。
入れて持ってくるの忘れた。
もう…既に舞い上がってもいるじゃないの。
お弁当のバッグを席に置き、改めて売店の方に向かった。

あ、フルーツヨーグルト、買っちゃおう。
手を伸ばしたところに、横から長い指の綺麗な大きな手が伸びて来た。

…え?腕の出所に目を向けた。…げ。

「これでいいのか?」

ひぇ~っ!な、なんです、いきなり、こんな事、こんな所で。全くの無警戒だった。

「ぶ、部長ー!」

「奢りの奢りだろ?これがいいのか?」

「あ、は、い…はい。これがいいです」

「解った。じゃあ、これ買って行くから、俺の分のお茶、頼めるかな?」

「あ、はい。解りました」

うわ、うわ。とにかく一刻も早くこの場を離れよう。
そうしておけば、席で一緒になっても、何とか偶然を装える。誤魔化せるかも知れない。…。
急いでお茶を入れ、熱い湯呑みを両手に、急いで席に向かった。

早く、早く…。お弁当を出して食べ始めていた方が良い。
何を一人で小細工しているのかと。
焦らないといけないのが何だか意味も無く辛い。…空しいぃ。
…とにかく、少しでも先に、普通に食べていよう。
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