押しかけ社員になります!
「…部長?一人の時、いつもこんな風ににするんですか?」
「ん?いや、しない」
イメージは、してても違和感無いんだけど。
「…こうしたら、西野が入り易いかと思って」
私と入る為?わざわざ?これも準備万端にしておいたのだろうか。
「当の西野は、中々入ろうとしてくれなかったけどな」
「部長~」
本当に…部長って人は。
「……お礼です。それと、中々入らなかった…約束を破ったお詫びです…」
抱かれたまま、部長の頬を両手で包んで、触れるだけの口づけを二回した。ん、…ん…。
「西野…」
…え…?ん?
「んん、ん゙……はぁ。部長!」
同じように頬を包まれ、やり返された。…もっと深めなやつだ。
「西野が誘惑したんだろ?」
「ゆ、誘惑じゃなくて、お礼です。お詫びですって言いました。も゙う」
はぁ、もう…甘くてドキドキしたじゃないですか。
「理由は何でも、…同じだ…」
正面から向き合うようにされ、抱きしめられ、また口を深く塞がれた。
「…何だかツルツルして、プルンとして…色々ヤバいな」
もう…、ヤバいなら離して?このままだと、これ以上の事、されちゃうの?駄目駄目。危険回避よ。
「ぶ、部長。そろそろ逆上せそうです。流して上がりましょう?ね?部長が先に出てください」
「…見るのか?」
あ、もう。そんな…いい声で…。わざと胸を交差して隠されてもですね…。第一、貴方は男性なんですから。隠す場所が違うでしょ…。
…返す言葉がすぐ出て来ません。こんなお茶目な事、部長がするなんて……もう。クス。
「み、見ませんから!ずっとあっち見てますから、もう、早く上がってください」
「解った解った。じゃあ次回は…」
「いいから、早く、…もう」
どうせ、今度は洗いっこしようとか、言うつもりなんでしょ?
「よし、出るからな」
シャワーが終わったようだ。
気配が無くなったと思ったから、振り向きながらゆっくり立ち上がった。あ、…腰が。
…え?部長?
居る。気配は無くなったんじゃなくて、消していたの?目の前に部長が居た。
不意をつかれて声が出なかった。
「あ、あ、」
い、いやー!詐欺よ、…この~、忍者もどき。…もう。今度はこっちが隠したいくらいなのに…。
もう間に合わないじゃないの…。
「足元、気をつけろよ。泡は滑るから。腰に思ったように力が入らないだろうから、踏ん張りが効かないはずだ。慌てないで、ゆっくり出ろよ」
あ…確かに。そうだった。…忘れていた、こうなる事。運ばれたからすっかり忘れていた。
立ち上がって、思った。部長が居てくれて良かった。
「部長~。ごめんなさい。有難うございます」
転倒していたかも知れない。居てくれたのに詐欺だとか忍者もどきだとか…思っちゃった。
だから、謝った。
部長には意味不明だろうけど。
「…ほら、ゆっくりだぞ」
手を取ってくれ、ゆっくり移動する私の速さに併せてくれた。密着したまま、シャワーで流された。
…私が恥ずかしがるからなんだけど。正面から抱くようにして背中を、…後ろから抱きしめられ…前を。
泡が流れて消えていくから、恥ずかしくて余計離れられない。…。こんなの…はぁ、堪えられないかも。
二回ね、って部長が言う。
…?
「ごめんなさいと有難うの、キスだ」
解りました…了承しました。後でします。