押しかけ社員になります!

「荷物はいいか?必要な物は入れてあるか?忘れ物はないな?」

「…は、い。…大丈夫です…」

「フ。本当に大丈夫なのか?」

「は、い…」

あ、ふ。……眠いです。怠いです。まだ、眠りたい…。
シャワーして服着てお化粧して、何しているか、自分でも解りません。

本当にギリギリまで寝てしまった。部長はスッキリとした顔で準備はすっかり整っていた。
昨日までの疲れの残った顔はどこへやら。
脚を組み、新聞を広げ、珈琲を飲んでいた。何て爽やかな事…。
…何をしていても絵になる…。素敵とは罪なのよ。
あ、ふ…。

「ん、飲むか?」

側でぼーっとして、返事もままならない私に、頭を撫で、悪かったなと言い、珈琲を入れにキッチンへ立った。
はぁ、もう無意識にメロメロです。

「ふぅ、…美味しい…」

この香りはほっと出来る。

「飲み終わったら、ぼちぼち出掛けようか」

「はい」

やっとまともに返事が出来た感じだ。


やはり車で出掛けるようだ。
トランクに二人の鞄を収め、出発した。

後部席には小さいクッションがあった。私が覚えているのはそこまで。

エンジンをかけ、駐車場を出る頃にはもう眠りに堕ちていたらしい。
だから、クッションとして収納出来るハーフケットが用意されていたのだ。
車に乗ったらきっと私は寝てしまう。
そう思っていたそうだ。
私の身体の事はよく解っているのね…。そうさせている張本人だから。
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