押しかけ社員になります!

「…はぁ、綺麗…。部長、綺麗ですね…」

「寒くないか?」

大丈夫。だって部長が後ろから腕を回してくれているから。

「はい、大丈夫です。周りに明かりが無いと、こんなに星が見えるものなんですね。凄く、瞬いて見えます」

「ああ…俺達のところでは無理だな。…静かだな」

「…はい」

二人しか居ない世界みたい。

「西野…吐く息が少し白い。やっぱり寒くなって来たな」

「はい。はぁ。でも、もっと見ていたい」

時間が止まった感じ…。夜空に吸い込まれそう。

…、あ。首元に巻いていたストールを後ろからそっと解かれた。
広げ直して肩全体に巻き直してくれた。そしてもっとしっかり抱きしめてくれた。

「このくらいで大丈夫か?」

「はい、温かいです。…凄く」

ストールのお陰というより部長だ。部長が抱きしめてくれているという事、自然と内側から身体が熱くなる。

「…また来よう。夏には夏の星座、冬には冬の星座を見に」

…部長ぉ。ロマンチックです。

「はい」

「さあ…、風邪をひいてはいけない。もう入ろう」

「はい」

また明日も見える。
手を繋いで部屋に戻った。


「ほら、デザートが届いているぞ」

スイーツもフルーツも、さっきの食事の部屋に沢山置かれていた。サーバーには珈琲も紅茶も。レモンもミルクも。

「部長…もしかして、これはオプションですか?」

とても贅沢…。こんなに気を遣ってくれて。きっと私を喜ばせようと余計にデザートを。部長…。

「アイスボックスの中にはアイスもあるぞ?ほら」

「はい」

「好きなだけ堪能するといい」

「はい。部長、私、これより甘いモノも知ってますよ…」

珈琲を入れようとしている部長の手をテーブルに押さえつけ、下から口づけた。

「…ここです。…ここが甘いって…知ってますから」

お礼のつもりだった。

「西野…。大胆な事をしてくれるじゃないか」
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