押しかけ社員になります!
自分のお弁当を広げた。
部長の分は取り敢えず、隣の席の上に置いておく事にした。
一緒にと言っていても、場所移動するかも知れない。
お弁当を作って来て欲しい事が、イコール、一緒に食べるとは限らない。
そこは…まだ解らないから。
だけど想像は見事に外れた。
「ほい。お待たせ…」
部長の声が頭の上から降って来たかと思ったら、お弁当のバッグを持ち上げ椅子を引くと座ってしまった。…隣に。
ああ~あ、座っちゃったよ?どうなの、この状況。
早番は人が当たり前に多い時間帯。
空いている場所に居ても遠めの人の目は沢山ある。
「あ、ヨーグルト、有難うございます」
取り敢えず奢って頂いたお礼は先に言っておこう。
奢りの奢りなんて。隙が無く対処の早い人だな。
「いや、お返しだ。
さてと、…俺のはこれでいいんだよな?」
「あ、はい。どうぞ。あの、部長…」
「ん?何だ?」
お弁当が取り出されている。
「部長?」
「何だ…」
包んだハンカチが解かれていく。
「最後通告ですよ?」
「何の…」
「本当にいいんですか?私の作ったお弁当なんか食べちゃっても」
好意のある人間が言う言葉とは思えない会話だけど。…だけど。…だけどです。急にこんな事になってる事が…解らないから。
「いいに決まってる。なんだ?毒でも入れたのか?
この期に及んで…今更お預けか?ここまで開けといて、俺に指をくわえてろとでも言うのか?」