押しかけ社員になります!
「お母さん?お父さん?…ただいま…」
「おお、和夏か。随分久し振りじゃないか。どうした?突然」
そうよね、そう来るよね。
「うん、実は、…ちょっと話があって。会って欲しい人が居るの」
「お、おお、…おお。まあ、入れ」
「うん」
連絡もせず、急に実家に帰った。
「母さんはそこまで買い物だ。すぐ戻るから」
「うん。…お父さん、あのね」
「あ、お茶入れよう。お茶より珈琲がいいか。そうだな、そうしよう」
…お父さん。
「私が入れる。珈琲でいい?」
「あ、うん、…確かマドレーヌとやらがあったはずだ…おぉあった。食べるか?」
「うん。お父さん、…はい」
珈琲を入れ座った。
「あのね…お父さん」
「……どんな人なんだ?」
あ。こんなに改まったら、もうそういう話だって、解っちゃうよね。
「うん。同じ会社の上司で…今は部長」
「部長?それはまた…。同期とかではないのか。幾つなんだ?」
「38」
「38か…和夏、幾つだっけ?」
「…お父さん、…28だよ?…」
「もう…そんなだっけ?」
「…そうです。もう。自分の娘でしょ?」
「……今は、って、どういう意味だ?」
「え、あ…うん。いつかは取締役になる人だから…」
「和夏の会社、同族会社なのか。トップになる人なのか?」
「…うん、いずれは多分、そうだと思う」
多分…。
「どうして…そんな人と…」
……お父さん。
「どうしてって…」
そこは、私だって知らなかったんだよ…。一番は好きになったからよ。
「お父さんは反対だ。その人が善い人であっても反対だ。可笑しいか?反対するなんて。普通は玉の輿に乗れて喜ぶモノか?」
「…お父さん」
……。
「…ただいま。お父さん?お客様~?
あら、…和夏…来てたの?急にどうしたの?何かあったの?」
「…紹介したい人が出来たって、話だ」
「えー、和夏?本当なの?」
「…うん」
「どうしたの?二人共、なんだか暗いじゃない?」