押しかけ社員になります!
「もう話してたの?あ、お母さんも珈琲入れて来るわね。丁度良かった。これも食べよう?和夏。
見て?美味しそうでしょ?…エクレア。中がね、ティラミス風のクリームで、シューは少し固めに焼いてあって、ビターなチョコが掛かっているのよぉ。これ美味しいんだから。お母さんのね、今の一番のお気に入りなのよ」
…。肩をポンポンとして台所に行った。珈琲を入れて、お母さんが戻ってきた。
「それで?どこまで話したの?聞いたの?ね、ね」
カップを手に、お父さんと私を交互に見た。家庭の明るさって、やっぱり母親の力なんだと思った。
「同じ会社の部長さんで歳は38歳。行く行くは会社の偉~い人になるらしいぞ」
一息に言われた。
「お父さん…そんな言い方…」
「え?何何?御曹司って事?え?そうなの?和夏」
「…うちの会社の創業者の孫なの」
「えー!?本当なの?…そんな人と、どんなご縁?どうしたの?」
「本当らしいぞ。…まあ落ち着け…」
「顔は?どうなの?やっぱりイケメンなの?俳優さんなら誰に似てるの?」
「母さん、落ち着け…」
「…男前だよ、…凄く」
「キャー、身長は?身長も高いの?」
「…高いよ。180は越えてる」
「キャー!!素敵じゃない」
…。
「ふぅ、いい加減にしないか……母さんの相手でもあるまいし。それに、私は反対だ」
「…お父さん、まだ会っても無い内から…そんな。和夏が紹介したい人って、こうして言うなんて、初めての事じゃないですか。もう、いい年齢なのよ?」
「…解ってる」
…さっきは年齢、確認したくせに。
お母さん、感情の起伏が激しい…。あんなにはしゃいだ後のこの落ち着き。さっきのは、きっと表面だけのモノね。私とお父さんの空気が悪かったから。わざとはしゃいだんだ。