押しかけ社員になります!

「いや、そうではありませんが。でも」

「お、玉子焼き、ちゃんと入ってるな。…旨そうだ」

あ、もう。聞けーー!
人の話はちゃんと聞けって、貴方が日頃言ってる事でしょうが…。

「じゃあ…頂きます」

「はい」

って、もう、食べちゃってるよ…。

「ぁあ?よく見たら俺と西野の弁当、ちょっと違うんだな」

「ああ、まあ、それは」

ふふん。はい。全く同じようには作っていませんよ?
量は当たり前の事だが、お菜も少しずつアレンジを変えて、ぱっと見、同じお弁当には見えないように作っておいたんです。
これでも浮かれず、冷静に作ったんですからね。

「気を遣ってくれたんだな。…同じでいいのに。でも有難う」

解ってくれたのなら、変えて作った甲斐もあったというものです。

「俺、玉子焼きは何も入れないこのままが好きだから、これは変えないでくれよな」

え…希望?要望?
次回もあるの?まだ続くという事?
…何だろう。それなら嬉しい言葉のはずなのに、まだ素直に喜べないこの苦痛は。
そうだ…、この状況が生殺しみたいだからよ。肝心な言葉がまだ無いからよ。
まあ、…いいです。ご所望であるなら作ります…。

「…今更ですが、好き嫌いはありませんよね?」

「ん~」

あるんかい…。

「あってもダメですよ。それから、これも今更ですが、アレルギーはありますか?」

「それは無い」

「良かった。だったら何でも食べて貰います。それが嫌ならお弁当は今後無しです」
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