押しかけ社員になります!

「厳しいな…」

「んん。ちなみに嫌いな物は何ですか?」

「椎茸…」

椎茸かぁ、あまりお弁当には登場しないかも知れない。煮物でもすればだけど。
でも、嫌いだと聞くと入れたくなってしまう。

「そうですか。入れる事は無いかも知れませんが、入れる時は解らないように作りますから、きっと食べられますよ?」

椎茸、美味しいのに…。何だか好き嫌いって、克服させてあげたくなる。

「いや、俺は敏感だから絶対解ると思う」

「いいえ、絶対に解りません!自信があります!」

「いいや、絶対解るね、香りで解る」

「解りません。気づかずに食べられます!」

この力説ぶりが、周りには仕事の話でエキサイトしているように見えたらしく、返って良かったようだ。
なんだ、今朝の叱られた仕返しに反論してるのかと。…どんだけ私は気が強いと思われているんだ。
椎茸の話題で少し弱り気味の部長は、やり込められたと思われたようだ。
叱られても反撃する女、私はこの時から、益々強い女と思われたかも知れない。

「部長?」

「…ん…何だ?」

「今後もこんな、その、阿吽の呼吸みたいな感じで、お弁当の日にしていいのですか?
持って来てるのに気がつかなかったりしたら…」

「それは無いな。…阿吽の呼吸か。まさにその通り。
俺は絶対に気づくから、大丈夫だ、今日みたいな感じで。
多くは語らなくても大丈夫だよ」

んんん。これでは本当に熟年夫婦じゃないの…。
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