押しかけ社員になります!
「和夏、そんなに来なくていいぞ?」
「え、何?お父さん」
「ん?…元気ならいいんだ。幸せならな。変わりなく仲良くやってるならそれでいい」
「お父さん…」
「青柳さんは…、ずっと来てくれるんだろうなぁ。父さんがいいと言わないから。意地悪だな、私は」
「お父さん…。大丈夫だから」
気持ちは解ってるから。
「気をつけて帰れよ。物騒だから、電車から下りたら携帯を手に持って歩けよ」
「うん、解ってる」
「じゃあな。おやすみ」
「有難う、お父さん。じゃあね」
「帰ったの?」
「おっ。…母さん、…」
「付けてたんじゃないわよ?ついて来てたのよ」
…。
「帰りましょう?」
「ああ、…うん」
「…もう。お父さんには私が居るでしょ?もう私とずっと居るしかないのよ?」
「…何言ってる」
「はい」
手を出す。
「夜道は危ないのよ?さあ」
渋々手を取る。握る。
「恥ずかしがらないの。昔に戻っただけよ。昔はこうしていつも繋いでくれたじゃないですか。フフフ。歳はとりましたから。これからはね、危ないから繋ぐのよ」
「母さん…」
「練習よ、練習。二人共もっと歳をとって…、おじいちゃんおばあちゃんになったら、こうして歩かないとね」
「…ずっと二人、…一緒がいいな」
「え?」
「…人生終わる時だよ。終わる時は、母さんと一緒だといいな。…寂しいじゃないか。一人は」
「…お父さん…。フフ…そうですね。何だかいいわね…嬉しい。でもまだまだ終われませんよ」
「はぁ…そうだな。和夏の幸せを見届けてからだな」
「そうですよ。もう大丈夫って、落ち着くまでは、まだまだ時間がかかりそうですしね。まだ当分おじいちゃんおばあちゃんには、なれませんよ?」