押しかけ社員になります!
「こんにちは」
「まあ、和夏さん。どうしたの?一人?」
「はい一人ですみません。突然来てしまいました」
「じゃあ、何?やっぱり喧嘩?いいわよ、匿ってあげる」
「あー、違います。それは無いです。違います。…仲良くしています」
「あら、フフフ。じゃあ何かしら」
「はい、教えて頂きたい事がありましてお伺いしました」
「取り敢えず、中に入りましょう。少し待って頂戴ね。菊ちゃん、さあ…こっちよ」
菊ちゃん?…ブンブン尻尾を振っている。
フフ。やっぱり菊ちゃんの方が嬉しいのかな。
わんちゃんは感情も割と表情に出るし、かわいい。…ちょっと体が大きくて力ありそうだけど。しなやかで綺麗で、優しそうなわんちゃん。
「お待たせ。さあ、入って」
「はい」
テーブルにお茶を置き、向かい合った。
「教えて欲しい事って、何かしら」
「はい。あの、早速なのですが、お母様は昔秘書をされていた事があると伺いました。私、まだ何も出来ない…勉強中の身なのですが、どうやってサポートしていけば良いか、教えて頂きたくて」
「確かに、してたけど。そうね…。私は何もしなかったわよ。出来なかった…と言った方がいいわね。相手が父だったから。
それに…少しの間だけだったのよ?…結婚までのね」
あ…。
「あの方は理解が無い人だったから。結婚したら仕事なんてしないでいいだろうって。辞めさせられたの。
自由にしたらいいじゃないかって言うのに、仕事は続けさせてくれなかったの。可笑しいでしょ?
だから、秘書の仕事も中途半端なモノだったの。何も、覚える間もなく、無能な内に辞めたから。
結婚は…お飾りのようなモノだったのね…。自分が自由にしたかったから、…私にも自由にしろと言ったのだと、自由という意味も…後から嫌と言うほど解ったのだけれど…。余計な話が過ぎたわね。
それで、吉城が秘書になれと言ってるの?」
「はい、強くは言いませんが」