押しかけ社員になります!

「もう…部長~…」

お母様の姿が見えなくなったところで早速議論だ。

「だってだな。和夏、今日は用があるって言うだけで、聞いても詳しく言わないだろ?…そんな事は今まで無かったし。言えない用なんだと思ったら…つい、探した」

もう…部長。

「怒っては無いです。今日の事も、GPSの事も」

「ごめん…。すまない。悪かった」

あー、もう…、そんなに落ち込まなくても…。怒ってないって言ってるのに…。
チュ…チュ。まるで挨拶ね。部長の右頬、左頬に軽く触れた。

「西野…。わっ。…ここは…実家だ…」

えっ。部長が声を潜めるから思わず振り返ったら、お母様が居た。
あ、あ、…。まずい、浮かれ気分丸出しなところを見られてしまった。

「喧嘩してもいいわよとは言ったけれど。もう、仲がいい事は良~く解ったわ。どうやら吉城だけが一方的に一緒に居たい訳でもなさそうね?」

いや~、非常に…恥ずかしいのですが。

「まあ、座りましょう。いいじゃないの。何も出来なくても。ちゃんとした秘書で無くても最初は大丈夫よ?今は優秀な秘書が居るのでしょ?」

加藤の事だ。

「お勉強中なら、自分が納得するようにしたらどう?それからでも遅く無いでしょ。…まあ、吉城が辛抱出来るかどうか。どうかしらね?」

…。

何だか、何も言えない。…ばつが悪い。

「まあ、いいようにするよ」

部長…。まさに適当な返答ですね。

「ねえ貴方達。今夜は泊まって帰らない?ご飯もたまには一緒に食べない?それとも、誰にも邪魔されたくないから、早く二人だけになりたいかしら?」

「お袋…」

「あ、私、泊まります。いいですよね?部長」

「吉城は?」

「俺も泊まるよ…」

「何だか渋々ねぇ」

「あの、私、菊ちゃんと散歩に行きたいです」

「そうね…だったら吉城と行きなさい。暴れたり噛み付いたりはしないいい子だけど、慣れない内は何かあるといけないから、ね?」

「はい」

「じゃあ行ってみるか」

「はい」
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