押しかけ社員になります!
「何だかな~」
「…はい」
「うちでこういうの、どうなんだ」
「…はい」
ご飯を一緒に食べ、片付けを手伝い、お風呂にも入った。勿論、別々に。
そして、今、今夜眠る部屋に来た。
離れの和室の部屋に用意されていたのは、二組の布団なのだが、…ぴったりとくっつけて敷いてあった。
「…これはきっと、お袋がお手伝いさんにわざとやらせたんだ」
部長は呟いた。
…。
「ま、いっか」
…。
「この部屋、離れだしなぁ」
…、…。
「取り敢えず、寝るか」
「…はい」
「和夏…起きてる?」
「…はい、起きてますよ?」
そんな…簡単には寝られるはずがないじゃないですか。
「……和夏」
「…はい、何でしょう」
何か可笑しい、話でもあるのかな。
「そっちに行ってもいいか?」
「…駄目です。寝てください」
そういう事…。いや、いやいや、絶対、駄目ですってば。
「…和夏、じゃあ、和夏がこっちに…」
「行、き、ま、せ、ん。…同じ事じゃないですか、今夜は大人しく寝てください」
そんなの無理に決まってるでしょ?部長の実家なのに…離れだって…大変な事になるじゃないですか。
「和夏…。隣の部屋は浴室なんだよな」
…。
「和夏」
「わぁっ部長!」
「返事が無いから寝たのかと思って…」
んな訳ないでしょ…。
「ね、寝てると確認したら、布団に入ろうと?」
「うん」
うん、て…可愛く言われても。…もう、入って来てるし…。
「和夏…シよう?」
しよう?…そんなハッキリですね、言われてもですね…。はい、とは言えません。確かに…既に部長の声にグラついてますけど。浴衣の合わせの開け具合も色気だだ洩れって感じで堪りませんけど。
枕元にあるライトだけの明かりっていうのにも、妙にドキドキさせられてますけどぉ?
う~ん…駄目駄目。駄目よ。
「ちょっとだけ…」
…だから、ちょっとだけって何ですか。行為ですか?時間ですか?…。
「駄目です」
「和夏…」
「駄、目、で、す、もう…、静かにしてください。部長は部長の布団に戻って…」
「はぁ…解った。じゃあ一緒に寝るだけだから」
あ、もう…。ちっとも解ってないじゃない。
抱き込まれた。はぁ。こうして一安心してはいけない。
だって…部長には、“ちょっとだけ”っていう前科があるんですからね。
「和夏…ちょっとだけ…」
…ほらね。
「駄目………もう!駄目です」