押しかけ社員になります!

「西野、今日のスケジュールはどうなっている」

「はい」

隣で加藤が見ている。今の私は第二秘書のようなものだ。
常務に二人も?
いえいえ、引き継ぎが終わったら、加藤はまた営業に戻るようです。
今まで秘書はしていたものの、加藤たっての希望で、部長の下に居るのは懲り懲りだって。

部長が…私と加藤がちょっと話をしていたらイライラするし、まかり間違って接触しようものなら、それが危険回避の為のものであっても、触れるなと言う。…。
これでは、私が加藤でも、面倒臭くてやってられないと思うだろう。加藤に対してだけだから、余計、しんどいだろう。

仕事中はあくまで常務と秘書と秘書。何もありはしない。仕事を離れても加藤とは何もありはしない。
大人なんだから。
部長は顔さえ見られれば納得している。
…子供なんだから。


「常務、ではそろそろ出る準備をしてください。私はお先に失礼します」

「ん、ご苦労様。ところで、西野。何だ、これは…」

「はい?」

「この重要書類に挟まれたモノは何だ…」

「さあ、何でしょう」

「…全く」

「スケジュール表です」

「…見れば解る」

「では聞かないでください。何だと聞かれれば…会合は程々に、その後、誘われても早々に帰って来てくださいねって事です。…今夜のこれからのスケジュールです」

聞き終わると、慌ててちゃんと見直そうとしている。

「何?…西野。今すぐ先方に断りの連絡を入れてくれ。帰る。…帰りたい」

「駄目です。仕事ですよ。今夜の会合は行って頂かなければ会社として困ります。…キャ。部長ー!セクハラですよ、セクハラ」

「うん、セクハラだ。はぁ…。だったら少しだけ充電させてくれ…」

「だったらとか…長い抱擁は身体に毒ですよ?さあ…車が待っています。吉城さん」

いきなり抱きしめられていた。常務になって何回目のセクハラですか?

「…西野、ずるいぞ。こんな物を作って見せるとは。…帰ったら細かいスケジュールなんか無視だからな」

「行ってらっしゃいませ、常務。…準備万端で待ってますから。…吉城さん」

「…西野~」

はぁ。会合とは言え…こんなんで仕事になるかってんだ。
…も゙う。こうなったら早く終わらせるぞ。俺は一刻も早く和夏が待ってくれてる部屋に帰りたいんだ。
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