押しかけ社員になります!
*おまけ『問題無い』の深層
私だけが知らなかった。
こんな、嘘みたいな事…現実にあるの?
全ての社員、誰一人欠ける事なく、役員の面談を受けていた。
入社時の話ではない。入社後の話である。
それは五年前から始まっていた。一人、一人個別に、役員による面談。内容は口外してはならない。
私が青柳吉城という人を意識し始めた頃と時期は被っていた。これは偶然の一致だったのだろうか…。
話した内容についてもだが、面談があった事さえも口外は禁ずる。そんな面談だったらしい。
だから、誰がいつ呼ばれて面談していたなんて、本人以外知らないという事になる。…それが全社員という事になるのだけど…。
社内規定にも『個別面談』が追加されていたようだ。規定なんて普段気にして見る事は無かったから知らなかった。知ったとしても、ふ~ん、なんじゃこれって感じだっただろう。
…第何条なんだろう。
呼ばれた事をそれぞれの人間が誰一人として口外しない。だから、当然私は面談そのものを知らなかった。
もし口外したら退職だ。
…そんな馬鹿な、横柄な事、って思う。
何故ならその内容が、青柳吉城の私用の部分に一切関わってはいけないというもの。…解りづらいと思った。
公になっていたり、何となく知られている事は良いのだと言うのだが、憶測で噂をしたり青柳吉城の行動に関わりを持ってはいけないと…。でも、噂はしてたよね、普通に。普通どこの職場でもある事だから、そのくらいはいいのか…。解り辛い…。
何とも…理解の難しい内容で、線引きもとても難しい。迂闊な事は言えないと言う事かな…。
では部長には関われないじゃないの…。ん?
要は、青柳吉城が誰かと特別親しくしていても、それに一切触れてはいけないというモノらしい。
だからお弁当を一緒に食べていても触れられた事がなかったんだ。
つまり、部長が、何に関しても、『問題無い』と言っていたのは、後ろにこんな事があったからだったのだ。
…こんな事が社内規定になんて……。随分と部長は擁護されていたものだ。
部長が昔経験した事を払拭する事を望んだ前会長の気持ち最優先で作られた物のようだ。
部長は大切に想われている、孫、なのね。
そして、何故、私が面談されなかったのか。
それは、当時の常務に、部長が、西野和夏からこういう事(レポートの件等)をされていると話がされていたから。らしい。
…それって。…だとしたら。
そしてその当時の常務は部長の叔父様だったから。今は社長なのだが。
やはり当人にも言ってはいけなかった事だったのか、…どうなのか。
部長も教えてくれないままだったから…。
ずっと『問題無い』と言われた事が疑問だった。
あ、…対象者が変わる事もあるからだろうか…。
?…でも…?。私が部長にアプローチをしてない社員だったら、私も役員の面談があった訳だ。……。
何も知らずオドオドして、疑問ばかりだった私は、営業部の人間にはどんな目で見られていたのか。
どうせなら『面談』も『問題無い』の内容も、ずっと、知らぬが仏、でいたかったな…。