押しかけ社員になります!
「君のお陰で機嫌がいい」
え?誰の事でしょう?
もう少し詳しく説明して頂かないと、相槌も返答も出来ませんが。
「菊次郎、菊ちゃんだよ。ずっと長い間、可哀相な事をした。女の子だったのにな。菊次郎なんて名前で呼んで。わしが悪かったんだ。精悍な様子だから思い込んでしまった。それに誰もわしに言わんのだ。
近頃は菊ちゃんて呼んだら嬉しそうなんだ」
「はい。可愛らしく笑います」
「そうだろ?あれは笑ってる顔だ」
「はい。とても愛くるしいです」
「ん。吉城も機嫌がいい。君は元気でいい。ずっと仲良くしてやってくれよ」
「じいさん、仲良くって…。子供じゃないんだから」
「大人も子供も同じだ。仲が良いとは睦まじいと言う事だ」
「大丈夫だよ。仲良くしているから」
「ん」
「じゃあ帰るよ」
「ん。次来る時は連絡してから来い。居るから」
「解った」
「離れに顔を出してくれ。わしと散歩に行こう、菊ちゃんと一緒に」
「はい!」
「じゃあ」
「お邪魔致しました」
「あの、部長?」
「ん?」
「離れって…」
「ああ、昨夜俺達が休んだ部屋があっただろ?その離れの奥だ。もう少し奥にも別棟の離れがあるんだ。
ま、じいさんの隠居部屋みたいなモノだな」
ここは…どんだけ建物があるの?この敷地はどこまでが青柳さんちなの?…。
…知らない方がいい。そうそう、知らぬが仏よ。