押しかけ社員になります!
*何度でも助走
「はぁ、…何を言ってるんだ…全く、いい加減にしないか…」
一度や二度、いいえ、何度拒否されようとめげてなんていられない。
今に始まった事ではない。もうずっと拒否られているんだから。
私は、この、難攻不落の男を攻め続けると誓ったんだ。
…と、偉そうに宣言しているが、私はこの男の事を詳しく知らない。知っているのは、私の上司である事、名前、性別、容姿、年齢、誰にでも解ること、そして仕事に対する姿勢。これ以外の事は知らないし、聞き込みをしようとも思わない。必要無いと思っているから。
「部長、ちゃんと見てください。急ぎの書類はできています」
「…あぁ、そうだな」
「はい!」
「ふぅ、西野……いいか、俺が問題にしているのはだな、こっちの紙だ。これが重要な添付書類だとでも言うのか?」
摘んでピラピラと振られた。
あっ、…。
「それは、ある意味重要かと」
部長にとってもですよ?フフ。
「西野…、何をヘラヘラと……はぁ。それはお前にとってだろ?」
「はい!最重要です」
とても大事です。
「…いい加減にしてくれないか。俺にとっては重要でも無ければ、欲しい添付書類でも無い。
これで何度目だ?これは却下!即、シュレッダーにかけろ」
ゔ~、また駄目か…。立ち上がって突き返された書類には、こういうタイトルを書いてあった。
『部長の日常を補佐する為の日程表』
ちょっとスッキリしてないタイトルだけどね。
「はぁ、西野…」
「はい、何でしょう?」
「日々の仕事はよくできているのに、何故こんな事をする…。俺にはさっぱり理解できん。楽しいか?こんな事をして。俺をからかっているのか、戯れが過ぎやしないか?」
「戯れではありません。大真面目です。少しでも部長のお力になりたいのです」
力というか……その先は。んん、この熱意、伝える術は難しいのです。
「はぁ。だったら…、こんな…子供の夏休みの過ごし方みたいな表なんぞ作ってないで、普通に仕事をしてくれ、普通に。その方が会社の為だ。この熱量は仕事に使え。…はぁ」
呆れられている。頬杖をつきながらの溜め息。
でも、それさえも、憂いがあって素敵…。
…いけない。誤解は解いておこう。
「就業時間内に作ったりはしていません。自宅でプライベートな時間に作りました」
「そんな事は聞いていないし、今はどーーでもいい。とにかく、仕事だけしろ。いいな?
…俺に関わるな。もういいから戻りなさい…」
「…はい」
ん゙ー、いつも全然相手にされない…。
でも私、めげませんからね。