押しかけ社員になります!
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【夜桜、お花見会】

自由参加…

日時○月○日○時〜

場所○○

……

回覧が回って来た。
みんなの溜め息の元。

自由参加と書いてあっても、やはりそこは社会人。
参加せざるを選ない。


この日ばかりは会社の屋上が解放される。

だから、どこそこの公園に場所取りに行かないといけないなんて大変な目には遇わなくて済む。

この時期ニュースでよく取り上げられる。
ブルーシートを広げての場所取りは大変な作業だ。

今年も会社の前の川沿いに咲く桜が満開になりつつあった。

川面を吹く風が、仄かに柔らかい香りを吹き上げて運んで来る。


屋上は、ちょっとしたビアガーデン化する。

取り寄せた料理を並べ、お酒を置き、あとは個人個人が自由に。
ビュッフェスタイルだ。
始まってしまえば後は楽だ。


「はぁ、天気が良くて良かったですよね。
準備が一度で終わって」

「そうね」

昨年は大変だった。用意した途端、突然、予測もしない局地的な土砂降り。
台無しになった。せめて出して並べる前なら良かったのに。

後日また改めたから、幹事になった人は大変だったと思う。
毎年恒例、新入社員に任される仕事。
この時期は入社してほぼ一年経過しているから、右も左も解らないという訳では無い。
でも、気を遣う役割だ。

営業部の課によってだから、日程調整も大変な作業だ。

「綾子ちゃん達の時は中々桜が咲かなくて大変だったね」

「そうでした。3月4月はお仕事忙しい時期なのに。
本当、気が気じゃ無かったです。開花予報も全然当てにならなくて」

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