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今の俺に人を好きになる事は無理なんだ。俺は…臆病者だ。西野が悪い人間だとは思わない。いや、逆だ。
真っ直ぐな心で俺にぶつかって来る、素直で純粋で、俺には勿体ないくらいだ。迂闊だった。
思っている以上に西野は俺の中に入り込んでいた。
受け入れないつもりが、いつの間にか、西野とのやりとりを楽しんでいたようだ。
こんな冷たい俺を…。敬遠されるだけの俺を…好きだと攻めてくる。

トラウマとはなんだ。はぁ…もう、あんな思いはしたくない。人を信じられなくなるような境遇には…二度と遇いたくない。
解っているんだ。頭では…。人が違うのだから、同じ事は起こったりしないと。

俺は…騙された。俺との関係で、出来てもいない子供を、俺の子だと言われ、結婚した。
憧れていた人だった。七歳年上の助教授。今なら准教授と言うのか。
仕事を手伝って欲しいと言われて遅くまで付き合った。

休憩しましょうとコーヒーを渡された。
飲んだら徐々に睡魔に襲われた。
大丈夫?と肩を貸されながら、どこかに寝かされた辺りまでの記憶は何となくあった。

目が覚めたら仮眠室で、裸で二人寝ていた。
俺は当然してしまったものだと思い込んだ。
それでも後悔なんてモノは無かった。
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