押しかけ社員になります!
そんな俺だ。
恋愛は疎か、結婚も考えられない。そんな男になってしまった。誰かを妙な人間関係に関わらせたくもない。随分若い頃の事ではある。興味を持って調べなければ、俺の過去など知っている人間はいないだろう。
極秘結婚という訳でも無かったが、入籍のみで式も披露宴もしなかったから、結婚しても何も変わらなかった。当時、周りで気付く物も居なかった。
違ったのは俺だけだ。俺だけがはしゃいでいた。…アイツに夢中だったからだ。
事実を知らされてから離婚も早かったな…。結局、戸籍を汚しただけだ…。
一体なんだったんだろうな、一大決心してしたはずの結婚は…利用されただけだった。
世間を知らないのは恐ろしい事だ。経験して初めて知った。
純粋にただ人を好きになる、その代償になった恐ろしさ。
人間、…女は、色んなやつが居るんだと…、勉強させて貰った。授業料は高すぎた…。
お陰で女性と心を交わす事はし無くなった。…ずっと引きずっている。
「部長…」
「…お、お、出たのか」
いつから居たんだ。
「はい、有難うございました。何から何まで。あ、さっきのコーヒー、頂きます」
「いや、もうすっかり冷めている。入れ直そう」
「いいんですそれが。過去は飲み込みますから」
「西野…」
「今のは、上手に掛けた話ではありません。
部長の話…詳しくは全然、解りませんが、軽い話だとは思っていません。部長をここまで悩ます事ですから…、私が簡単に聞ける話では無いのでしょう。でも、私は私です。私の思う通り、今まで通り、好きでいます。何も詮索せず、お弁当も…必要とあらば作り続けます。
とにかく、ただ好きでいさせてください。好きでいる事を難しく考えないようにします」
私は部長という人が好きなんです。