押しかけ社員になります!
踏み込んで欲しく無い部分に踏み込む訳にはいかない。それを本人が望んでいないのだから。…まだ、と思いたい。
「西野…、駄目だ」
俺はこの真っ直ぐな気持ちにまだ応えられない。中途半端には…。
「部長、だから駄目でいいですと言っています。無理に受け止めようなんて思わないでください。今までだって、私は部長から駄目しか貰ってないのですよ?
全て突っぱねられているじゃないですか。何を今更ですよ?
どんなに押しても本気だなんて思われてないですし。そのままですよ。変わりません。
ただ、今までと違うのは、私が…ちょっと言葉にしてしまっただけです。変わりません、何も。勝手な思いで部長に迷惑をかけているだけの話です、初めから」
俺は西野の事が気になって来て…、好きなんだろうと思う、…多分。だから、今まで考えようとしなかった事で、こんなに苦しくなっているんだ。西野を不幸にしたくないと思うから。それこそが好きだと言う事、だ…。
待っていて欲しいと言ってもいいのか。俺の臆病が治るまで。また、本気で人を好きになれるまで。いや、…駄目だな。そんな無責任で不確かなモノで縛っては。それこそ西野を不幸にする。俺が受け入れなければ西野もいつか、時間が経てば忘れられる…。…。
「西野、送って行こう」
「えー、もうですか?せっかく部長の部屋に居るのに」
開き直ったら言いたい事も遠慮なくズバズバ言えそう。返って良かったかも。レポートより手っ取り早い言葉は、単刀直入で良いのかも。
「お昼一緒にってどうですか?部長が送ってくれて、少し待って貰って、私、パパッと着替えますから。お化粧もなるべく早くします。
ランチに出掛けるのはどうです?あー、駄目ですよね?お付き合いしてる訳じゃないから。プライベートで一緒なんてそんなところを誰かに見られたら。
だったら買い物して帰って、うちでご飯なんてどうですか?大したモノは作れないですけど、普通の家庭料理なら出来ますよ?どうですか?部長」
「西野…、どれも駄目だ。とにかく送るから」
「じゃあ、…じゃあ、ドライブに連れて行ってください」
「西野…、駄目だ」
解ってます。困らせているのは承知の上です。
「送ってくれても車から降りてあげませんから。そしたら送らないって言うなら、帰りませんからね」
「はぁ…西野。…解ったよ。ドライブに行こう」
「そう言って真っ直ぐうちに連れて帰ったら、車から降りませんからね?」
「ああ…はぁ、解ってるよ」
急にしつこくなって呆れられたかな…。でもそんなの考えない。ずっと押さなきゃ。今、押さなきゃ。
諦めたと思われてしまう。