押しかけ社員になります!
……ピンポン…。ピンポン…。
…ん゛…はぁぁ。…誰だ、こんな夜中に…。放っておこうか。訪問者の予定も無い。
ピンポン…。
こんな時間だ。出なきゃいけない義理も無い…。
ピンポン…。しつこいな…、間違いじゃないのか。
ピンポン…。あー、もう…。出なきゃ収まらないか。
「…はい。あ…西野…、西野か?」
どうした…。
「はい…部長…」
何故来た…。こんな時間に。危ないじゃないか。帰れ、と本当は怒鳴りたい。だが、夜中だ。
「あの、部長…寒いです」
…寒いだと?……それは、入れてもらおうと目論んだ手なのか…。
「……解った、…とにかく来い」
はぁ…失態だ。西野を泊めてしまったばっかりに、住所も部屋も教えてしまったようなものだ。…迂闊だった。
しかし…一体。こんな時間にどうした…。
コンコン。
あ、あ…。来いって言ったんだった。本当に上がって来たんだな…。
…どうしたんだ西野。
カチャ。
「…西野、お前…」
「部長…寒い…です。途中で雨が降り出して…」
抱くようにして体を腕で擦っていた。
「馬鹿、先にそれを言え。こんなに濡れて。早く入れ。
今タオルを持って来るから」
見れば髪も服も濡れていた。
「寒い…です。はしたない事を考えて、…部長に会おうとしたから、はぁ…罰が当たりました」
「おい、西野、しっかりしろ。おい」
抱き留めた西野の体は冷え切っていた。
くそっ。はぁ…、あ゛ー、もう。人の気も知らないで。こんな…。
「…西野、洋服、濡れてるから脱がせるぞ。いいな?」
「…は、い」
背中に回した手でファスナーを下げた。ワンピースがストンと落ちた。バスタオルで体を包んだ。
「…部長、私、……抱かれに来ました。はしたないですか?部長の事考えてたら、眠れなくなって。…男らしいでしょ?」
「何言ってる…。馬鹿な事を…西野…。さあ、取り敢えず、ここに座れ」
ソファーに座らせ、何か着る物をと離れかけたら腕を掴まれた。
「…そうです、いいんです。馬鹿でも何でも。抱いてくだ…ぁ」
んん、ん。反射的な衝動だ。俺は西野の言葉を唇で遮断していた。
…馬鹿な事しやがって。…俺だって。
本当に、人の気も知らないで…。