押しかけ社員になります!
「俺に…人を好きになる事を思い出させてくれないか」
上半身を引き起こし、抱きしめる。息をする事も、胸も苦しい。この…行為が高鳴らせているのか。それとも、好きだと脳が反応しているのか…。西野。
「ただ好きなだけでいいと思います。後は自然に…勝手に育ちます。多分そんなモノだと思います。だから心は放っておけば、…成り行きでいいと思います」
「それでいいのか?」
「私ならそれで充分です。求め過ぎては、いつか、欲の塊になってしまいます。大変です。どんな事にも欲はついて回りますから」
恋愛は欲しいばっかりになりがちだ。
「なら、自信を持って言える。俺は西野が好きだ…と思う。自信を持ってと言った割には弱気なんだが…。
多分、好きになろうとしている。すまない。こんな言い方では、嫌だろ?嬉しくも無いよな?」
好きになる努力をしようとしているなんて言い方は、もっと嫌だろう。
「いいえ、有難うございます。私は、お分かりでしょうが、もうずっと好きですから。部長を思う私の好きは、部長の私が好きに勝ってますから」
「俺の好きは…なんで表現すれば負けてないと解って貰えるかな…」
まだ小さい思いだとは解っている。
「フフ。負けず嫌いですね。部長だからプライドですか?
短絡的だと、思わないでくださいね?
もう一度キスして…抱きしめてください。
そしたら私よりも好きが強いって認めてあげます」
はぁぁ、私、中々大胆…。
「…一度でいいのか?」
「はい…それは好きなだけ…何度でも結構ですけど?」
…。
欲張ったら駄目だって話したばかりだから、この欲とも言える発言を、認めていいのか悩んでるのですね部長。
「お互いが同じように求めているモノなら、欲は帳消しか…」
やっぱり好きは欲張りになる。
「キスして、抱きしめて…、その先は欲か?」
「それは…欲張りだけど、この際違います。だって…最初に言いましたから、…シたくて来ましたって」
「ああ…聞いた。まず…キスからだ…」
ん、んん…。甘、い…。食べられてしまうんじゃないかって…。熔けてしまいそう……。
深くゆっくりと探られて、…駄目。凄く感じてしまう…。
こんなの長く続けてたら…。…駄目。
「ん、ん。部長…はぁ。こんなの…駄、目です。はぁ…、ん…ん、ん。駄、目、です…イッてしまいそうです。あ…、んん」
いやー。なんて恥ずかしい事を口走ってるの?
だって…部長のキス…甘くて、触れる度、…蕩ける…。身体が可笑しくなる…。もう……。
それでも、わざとなの?って思うくらい止めてくれない部長は、薄く片目を開けて、フッと笑いながら食む。
い、や、本当に、こんなキス、駄目なんですってば…。
ギュッと抱きしめながら、どうする?、なんて…余裕で耳元で囁かないで…。
既にどうにかなってしまいそうです。