押しかけ社員になります!
キロク
やはり、勢いを無くすと、何も無かったように元通りに落ち着くものだ。
あれから数日経過したが、準備万端になったとも言って来ない。まだ数日経っただけ…私の鼻息が荒いのかしら。焦って催促でもしようものなら、節操が無いと思われそうよね。それは流石に恥ずかしい。
大人しく待っていた方が自分の為…。でも、今までとは違う。
少しでもあの唇や身体に触れたと思うと、…少しではないけど。部長の存在を認識しただけで、身体が熱くなってしまう。
この上、もし…交わってしまったら…。
はぁぁ……、私はただの腑抜けになってしまいそうだ。どうした、私。追い掛けていた時のようにシャンとしろ。仕事、仕事。
ペチペチと両頬を叩いた。
某力士や、某レスラーのように、気合いだ、気合い。だ。無能な部下になってガッカリされたくはない。
「西野!」
あ…ぁぁ、駄目だ…。はぁぁ。今の今、気合いを入れたとこなのに…。低くて素敵な声が私を呼んだ。
「西野…、西野!!」
……いけない。蕩けている場合じゃなかった。
返事を忘れるなんて。いろはの、い、じゃないか。
「はい!すみません」
「…ちょっと来い…」
どうやら会議室に直行のようだ。
「はい」
後について行った。ごめんなさい、みなさん、部長の大きな声を聞かせてしまって。
【使用中】になった。
「…西野」
「すみません!解っています、部長。しっかりします。大丈夫です。気合い入れますから」
「ふぅ…。西野。なんて言うか…。そんなにポーッとしてくれるのは、俺としては、嬉しい限りなんだがな。西野らしくないぞ、と思ってな。駄目出しだ。これ、見てみろ」
「え、…は、い」