押しかけ社員になります!

感情は交えない、事柄だけを伝えようとする感じが文章から読み取れた。
その簡潔さが、余計、部長の感情を伝えていた。
こんなデリケートな内容を、私に打ち明けてくれるなんて…。

内容は、部長が19歳だった頃の出来事。
これが教えてくれようとしている事実。

部長が…恋い焦がれた人は大学の助教授。年上の女性。…26歳。七つも違う。それだけでも淫靡な感じがする。
きっと綺麗な人だったのだろう。間違いない。
綺麗な年上の女性…大人…夢中になるだろう…。

部長が憧れを抱くような人。この部分だけで妬けてしまう…。
妬いても妬いても、当たるところの無い、行き場の無い気持ちだけど。どんなに妬いても変えようの無い過ぎた事実。

…はぁぁ。正直、好きな人の恋愛遍歴は知りたく無い…。

バツイチはその人との結婚、そして離婚だ。
妊娠、子供、という文字に動転して、誤解してしまいそうで…。
何度も理解出来るまで読み返した。

子供は、部長の子供ではなかった…。

助教授と遅い時間までの作業。飲み物に睡眠薬を入れられていたらしい。
目が覚めたら、二人、裸で寝ていた。
はぁ。男としては、そりゃ焦るよね、驚くよね。
若いし、もしかしたらって、思ってしまうには状況は整っているもの…。間違いなく、シたと思うよ。記憶が無いんだから。

そして憧れの助教授が妊娠したと言ってきた。
俺の子か?なんて、疑いもしないよね。自分に言って来たのだから。
『身に覚えがあるのは貴方だけです』って、言ってるような行動、告白だもの。聞き返す事は彼女を疑う事になってしまう。
だから言われるがまま自分の子だと完全に信じた…。思い込んだ訳だ。

そして、入籍…。責任をきちんと取った。というよりも、入籍は…、結婚は、その助教授といつかしたかったモノだろう。妊娠はそのきっかけになっただけ…。
部長、嬉しかっただろう。…妊娠と結婚、同時だものね。…。親になるんだから、頑張らなくちゃって思ったよね…。

そして両親は離婚…。

自分の子供だと思っていたものが、途端に、子供の父親は自分の父親が親だったと解る…。

父親と助教授の関係は、部長と知り合うずっと前からあった。両親が離婚しなければしないで、そのまま不倫関係は続けるつもりだったようだ。

…両親の離婚は成立した。
部長は、子供が自分の子では無かった事、同時に助教授が父親の女だった事を知った…。
利用されただけの入籍、何もかも…信じていたモノは壊れた、失った訳だ。
好きだと思っていた人間は、最初から自分を利用するために近付いて来ていただけだった。そして裏切っていた。……。酷い。

セックス、妊娠…、誘惑の元になった女の容姿…、言葉、態度、色気…全て武器として使った。
女性に、恋愛に、それから結婚も…、その事があって、不信しかない…という事だ。
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