押しかけ社員になります!

「…う、…ん、こうして西野と弁当を食べていると、異空間に居る気分になるよ」

「え?異空間、ですか?」

「ああ。…旨。玉子焼きはもう他のモノは食えなくなった。
ああ、異空間っていうのはな、会社に居る気がしないって事だな」

こんなザワザワとした社食に居ても、この一角に西野との空間が出来あがる。他が気にならなくなる。
不思議だな、和む…。西野の懐が深いのか…。俺より遥かに若いのに。
なんだろうな、この安定した安心感は…。

「美味しいのは玉子焼きだけですか?」

「…ん?他の物も旨いぞ?」

「本当にどれも?」

「どうした。ぁあ?…。
ああ…そういう事か。どれだ?入ってるのは」

「はい、これです」

ミートボールの中に刻んだ椎茸を入れてある。絡めてあるソースが和風だから、余計解り辛いと思う。

「ミートボールか。んー、全く気が付かなかった。…やられたな。
匂いで解りそうなもんなんだが。旨くて普通に食べた」

「そもそも椎茸の何が嫌なんですか?」

「…ビジュアルだ…」

「あ、だったら、嫌いの内にならないですよ。食わず嫌い?見えてないから食べちゃったんですよ。匂いがしたとしても気にならなかったんですよ」

「かも知れないな」

椎茸論争をしているなんて誰も思わない。部長の右手前方には私の渡したファイルもあった。
ランチで今日も激論だ。


「ご馳走様。美味しかったよ。西野、今回のこれは預かる。読ませて貰うよ」

「はい、宜しくお願いします」

読んでくれるんだ。
う~ん。地道に企画書を作って渡してる風だな。
< 50 / 192 >

この作品をシェア

pagetop