押しかけ社員になります!
「…う、…ん、こうして西野と弁当を食べていると、異空間に居る気分になるよ」
「え?異空間、ですか?」
「ああ。…旨。玉子焼きはもう他のモノは食えなくなった。
ああ、異空間っていうのはな、会社に居る気がしないって事だな」
こんなザワザワとした社食に居ても、この一角に西野との空間が出来あがる。他が気にならなくなる。
不思議だな、和む…。西野の懐が深いのか…。俺より遥かに若いのに。
なんだろうな、この安定した安心感は…。
「美味しいのは玉子焼きだけですか?」
「…ん?他の物も旨いぞ?」
「本当にどれも?」
「どうした。ぁあ?…。
ああ…そういう事か。どれだ?入ってるのは」
「はい、これです」
ミートボールの中に刻んだ椎茸を入れてある。絡めてあるソースが和風だから、余計解り辛いと思う。
「ミートボールか。んー、全く気が付かなかった。…やられたな。
匂いで解りそうなもんなんだが。旨くて普通に食べた」
「そもそも椎茸の何が嫌なんですか?」
「…ビジュアルだ…」
「あ、だったら、嫌いの内にならないですよ。食わず嫌い?見えてないから食べちゃったんですよ。匂いがしたとしても気にならなかったんですよ」
「かも知れないな」
椎茸論争をしているなんて誰も思わない。部長の右手前方には私の渡したファイルもあった。
ランチで今日も激論だ。
「ご馳走様。美味しかったよ。西野、今回のこれは預かる。読ませて貰うよ」
「はい、宜しくお願いします」
読んでくれるんだ。
う~ん。地道に企画書を作って渡してる風だな。