押しかけ社員になります!

はぁ、有り難いと言えば有り難い。鎮痛剤も持って無かったし。本当に辛くなってきてたし。
帰ったら少し横になろうかな。
即、帰り支度をして退社した。

部長に呼ばれた後、コソコソ話して急いで帰ったものだから、余程の事で叱られて我慢できないほど辛くて、今回はとうとう逃げ出したと思われたかも知れない。こんな時、部長の冷酷なイメージに上手く助けられている気がする。
実際部長は冷酷じゃないのに。誰も、部長が私を気遣って帰れと言ったとは思わないだろう。


ブーブー…。ん゙~?誰だろう、…知らない番号…。
枕の横に置いたまま携帯を放置した。切れた。
ブーブー…。まただ…。
知らない番号は極力出たくない。…ん゙ー?
…ふぅ。…出てみようか…。

「…はい?」

「西野か?」

ドキッ、ズキッ。

「え、部長ー?!」

…どうして。

「声がでかい…帰ってるのか?」

「は、あ。あ、はい。はい。家です。あの…」

「大丈夫か?」

「え?あ、ああ、はい。さっきは有難うございました。…いつもの事ですから、大丈夫です」

「ん、そうか。…しんどいか?」

「それなりに、です」

そんなに気遣われても…。経験のない事は解りませんよね?

「…今夜、寄っては駄目か?」

えっ?

「あ、でも…私、それは…」

「…馬鹿…あ、すまん。何を考えてる。俺は鬼じゃないんだ。こんな時に襲ったりしない」

はい…。そうでしょうけど。でも…。でもですよ。無いと思っても、考えてしまうじゃないですか、…いきなり来たいなんて言うから。……ちょっと…だけとか?

「直ぐじゃない、まだ帰れないんだ。少し遅くなるがいいか?」

「私は時間は大丈夫ですが…」

「何か買って行こうか?食欲ってあるのか?」

「私は、その点は普通にあります」

「そうか。じゃあ適当に買って行くよ」

「あ、いいですよ別に。部長?部長の方こそご飯はどうされます?有り合わせで良ければ来られてから食べますか?」

「しかし…こんな時に、甘えていいのか?」

「勿論」

「では食べる。頼むよ」

「はい。あの、だいたいで結構です、何時くらいになりそうでしょうか?」

「そうだな、ん~9時前かなぁ」

「はい、解りました」

「なるべく早く帰るよ。じゃあ後でな。あ、簡単でいいからな。無理はするなよ、頼んどいてなんだけど。出来なかったら出来なかったで構わないから」

「はい。適当にしますから」

「うん」

なるべく早く帰るよ、だって。何だか…フフフ。
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