押しかけ社員になります!
「おぉ大丈夫か。すまない、驚かせてしまったか?」
「ゴホゴホ、…ゴホ。だ、大丈夫です。ん゙んっ、大丈夫です」
もう、驚かさないでくださいよね。部長こそ、どうしたのですか?と私が聞きたいくらいです。
「此処いいか?」
「ぇ゙はい、どうぞ」
嫌も何も、そのつもりですよね。むせちゃって声もすんなり出ないし。
あ、部長もAランチだ。並んで同じ物って…。これも気が合う一つだと思えば…。ファミレスでもハンバーグ、一緒だった…。ファミレスはハンバーグの注文率って高いか…。
あ…フルーツヨーグルトまで同じじゃないか。…気に入ったのかな。アイスクリームは最近どうなんだろう。ヨーグルト食べたら、もう今日は食べないよね。甘いモノ、足りてるんだ。
「…西野、…西野」
ん?いつに無く小声で、どうしたのかしら。
「怒ってるか?」
「え?」
こっちまで声を潜めてしまう。顔もさりげなく寄せちゃうし。…これではまるで、本当に内緒のコソコソ話じゃないの。
「…いや、その、だな…例の、マークの事だ…」
ぶっ。ゴホゴホッ。今度はご飯が…。なんて事、聞くんですか。
「大丈夫か?ほら、これ、お茶飲め。大丈夫か?それで…その…怒ってるか?」
……。あ…もう。えー?手、手。手が背中に。背中なんか摩っちゃ駄目なんですってば。
「だ、大丈夫です。怒っていませんよ。あの、もう、大丈夫ですから」
擦るの、止めさせないと。
「ほぅ、そうか。本当にだな?」
「コホ。本当です」
「…いや、つい…気が付いた時には、…あんな事に」
擦っていた手が止まった。ついって…。つい、で、こんなに沢山…。
私には何故こんな事になったのか、説明がまだ無いのですよ?何をどう言いたくても…会社だし、聞くに聞けないし、怒るに怒れないじゃないですか。まあ、多少、何かしらされるとは思ってましたけど…寝たままでなんて…。
「…大丈夫です。…今は、もうその話は止めませんか?会社ですし。誰に聞かれてるか解りませんから」
もう、コソコソ話し続けるしかない。
「うん。…解ってる。とにかく、怒ってないか、気になってたんだ。別に誰かに聞かれても問題は無いけど?」
いやいや、大有りですよ?仕事の話じゃないんです、キスマークの話ですよ?
だから…、問題無いって、いつも言うけど…。
誰かに聞かれても問題無いって言ったけど、どういうつもりですか?
「西野、今夜うちに来ないか?」
「え?…でも、まだ…」
だって、まだ…無理ですよ?そんな目的だけで言ってる訳では無いだろうけど…。
「うん。一緒に寝るだけでいいんだ。…一緒に居たい。今日も一緒に居たいんだ」
「部長っ!!」
ガタガタッ。…痛。
「…西野、…声がでかい。落ち着け…取り敢えず座ってくれ」
勢いよく立ち上がってしまった。膝を打った。
「…すみません」
もー、こんな所で一緒に寝るとか言うからです…。
でも、だって…、部長、どうしちゃったの?