押しかけ社員になります!
「…部長、…どうしたんですか」
「とにかく、心配もあったけど、…ただ会いたくて。んん。西野が今日、うちに来たら話そうと思っていたんだ。最短で一年後、俺との結婚を考えてみてくれないか?バツイチの俺で良かったらだけど」
ちょ…。
「部長、待って。ちょっと待ってください」
「待たない。俺は、俺の気持ちがはっきり解っているんだ。…恥ずかしながら……もう止められないくらい好きになっている。だからって、勢いだけで言っているんじゃない。…若僧の好きじゃない。西野の人となりを見ての好きだ。だからこの先、好きが薄れる事は無い。
西野は素直に性格を見せてくれていると思う。だから西野の事、心配も不安も、不信に思う事は何一つ無いと思っている。一番大事な事だよな。
これをちゃんとしてないから、西野を訳が解らない妙な気にさせていたんだよな。
俺は西野が好きだ。結婚を考えた上で、俺と付き合ってみてくれないか?どうだ?バツイチ男は嫌か?」
「部長~。だから、ちょっと待ってくださいと言ってます。…いきなり濃過ぎます。…なんですか…こんな大事な事を。私なんて…頭にタオル巻いて聞いてるんですよ?
…違う、格好がどうとかではないです。
もう…なんなんですか。まだ未提出のレポートだって、…あるんです。どうして…。なんなんですか。何で急に走り出すんですか」
「西野」
焦っていた。部長の言葉、嬉しいくせに…凄く嬉しいくせに、動揺している自分を誤魔化して、隠したかったのもあった。それにしても、いきなりだ。心の準備も無いまま、…こんな……いきなりにだ。
「西野?…」
少し不安気に顔を覗かれた。
「…私だって…そんなに、凄く若くもないんです。部長の今の言葉、この先、もし、無しだって、取り消されたら、もうそれっきりになるんです。
こんなに好きになる人は、部長以外もう居ないんですから。…最後の恋なんです。
だから、部長が…結婚はしたくないって、もし今と気持ちが変わったとしても、私はずっと好きなんです。…忘れる事なんて出来ません。この先ずーっとずっと部長だけが好きなんです。
最短とか、自分に無理を課さないでください。大人なんです。後悔の無いよう、じっくり考えてください。
…部長なんですから、急にグイグイ来ないでください」
何を言っているんだろう。もう、訳が解らない。
自分の方が散々迷惑も省みず押していたくせに。
私ったら…、部長に。言った責任を取れと、強要してるように聞こえなかっただろうか。そんなつもりは無いのに。だから感情的に口走っては駄目なのよ。一呼吸おいて、自分を落ち着かせてからでないと。でも口が止まらない。
「西野…」
「それに…、まだ解らない部分だってあります。相性です。…身体の相性が合うかどうかも、まだ解りません。
そんなままで、…早まった事を言ってもいいんですか?部長。私は嫌です…。シた挙げ句に、…やっぱり止めようなんて部長に言われたら…。そんなの…悲し過ぎます…」
もう…。何言ってるんだろう私。本当、失言だらけじゃないの。
…今は好きって思ってくれるだけで充分なの。気持ちを言ってくれただけでいいんです。
それが嬉しかったから。
何もかも、自分の気持ちが追い付かないのは嫌なんです。
私は、まだ、もっともっと好きだけでいたいんです。