押しかけ社員になります!
俺って、いじらしいと思うんだが…。連日コンビニでパンツとTシャツを買う中年男。
若くも無い男が…パンツとTシャツをレジに置いた時、店員はなんて思っているんだろ…。
その内、今日もですか、なんて言葉が、挨拶がわりになるかも知れない。
どんな印象だ…。
洗濯が苦手なヤモメか…。洗濯して貰えない旦那か。女、取っ替え引っ替えしてる男か。
出張が延びている出来ない会社員か。家に中々帰れない刑事か。…フッ。勝手に詮索しろってんだ。真実は本人のみぞ知る、だ。
……入り浸っているんだよ。好きな女性の部屋に泊まりたいんだよ。一緒に居たいんだ。悪いか。
何も言われた訳じゃないのに、自分から牽制するような態度を取ってしまった。少々機嫌が悪いのは確かだが。なんなら、明日も来てやろうか?
あ、…何か買って帰るか。…決してご機嫌取りじゃないぞ。女子はやっぱりスイーツか。
「彼女さんちにお泊りですか?」
ぁあ?この店員、初めましてだよな。
しかも俺ぐらいの年齢の男は、無視しそうなものなのに。なんで見るからに不機嫌な俺に話しかけて来たんだ。
「あー、すいません。着替え、やっぱり欲しいですよね。俺もたまにこういうのあるんで…つい一緒かなと思って。彼女んちに泊まりたくなってパンツ買って、その後で、…あっ、て思い出して、甘いもの買うんですよ。あいつこれ好きだよなって。
なんなんですかね。少しでも嬉しそうな顔が見れると、やったって、思うんですよね」
な、何だ…若いのに、案外いい奴じゃないか。若いのには偏見か。
「…そうだな」
君、解ってるじゃないか、って思ったら、うっかり共感してしまったじゃないか。
「はい、お待たせしました、有難うございました。…頑張ってください」
袋の持ち手を捩り、二つ渡してくれた。頑張ってて、何をだ…。ま、いい、か。
「…おお。頑張るさ。有り難う」
…。これから、ここに来る度、応援されるのか、俺。
…フ。きっと他の奴と一緒になった時、おっさんがさぁって、笑い話にされてるのがオチだな…。