押しかけ社員になります!

ピンポン。

押してみた。いきなり開けてみようかと思ったが、普通は鍵をかけているだろうし、チェーンもかけてあるだろう。
ん?…出て来ないつもりか。

ピンポン。

ん?どうした?鳴らすのはもう止めようか。近所の手前もある。さっき来た時も散々連打した。あまりしつこく鳴らすのも、西野が今後困るだろう。

ん……出て来ないなら、…帰るか。元々泊まる事に歓迎ムードでは無かった訳だし…。
何気に荷物は持って出てたし、このまま帰ろうと思えば帰れる。
…ドアノブに手をかけてみた。回す。回った…開いてるじゃないか。引いた。…。何してる。

「西野!!おい、危ないじゃないか、鍵もかけないで」

怒鳴るつもりじゃなかった。心配したんだ。

「え、…ああ。でも、かけてたら、閉め出したみたいに思うのかと…鍵を壊されても困りますから」

ああ…。何だよ。俺の言った事を守ったって事か?開けておいたんだから、勝手に入れって。

「はぁ…。それは俺が開けてくれって言っても、開けない場合の話だろ?普通に開けてくれるなら、夜だし一人で居るんだから、鍵はかけておくべきだろ?」

「大丈夫です」

「は?何が大丈夫なんだ」

「大丈夫だったから、いいじゃないですか」

「それは結果論だ。ちょっとの時間だからって、何かあったらどうする。取り返しはつかないんだからな」

あ、……ふぅ。

「…すまん。イライラさせる事を言って。鬱陶しいよな」

心配したからだ。

「…いいえ。注意が足りませんでした、夜なのに。部長の言う通りです。私が悪かったんです」

頭ごなしに叱ったようで…はぁ、上手くいかないもんだな。心配する気持ちが上手く伝わらない…。
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