押しかけ社員になります!
「俺を呼んだだろ?吉城って。下の名前で。…策士だな。ずるいぞ。今日、呼ぶなんて」
…策士だなんて。そこまで謀ったつもりは無い。たまたまでは無いけど…。
「これからも呼んでくれるか、家に居る時、…たまにでもいいから。あー、なんなら…」
「そんな…限定した時だけ呼んだりしません」
どうせ、シてる時に呼んでくれとか、言うに違いない。あ、…でも。
「ん?ああ。会社でも呼んでくれても構わないぞ?」
そういう事?…。部長が策士じゃないの?
ちょっとアッチの…そう思うように上手く誘導された気がするんだけど…。そうだと思う。
絶対この顔付きは、してやったりって、自信たっぷりの顔してるもの。ふ~んだ。今日だけ限定に頑張って呼んでみただけです。普段も…どんな時も、ずっと部長で通してやるんだから。
「会社でなんて呼んだら、大変な事になります。私、どんだけ心臓強いんだって。天変地異くらい驚かれます。それに、名前呼びする関係なんだって、思われます」
そうでなくても今の私の位置はよく解らない。部長とご飯をしてようが、誰からも干渉されない。一切触れられた事がない。いくらなんでも…ある意味、不安で不気味な現象だと思う。
「だから、それは心配ない、問題無いって言ってあるだろ?」
だから、その根拠が解りません。何故、誰一人、部長でなくても、私に聞いて来ないのか……教えてくださいよ。
「…そのうち解るから」
「え?。そのうちって何ですか?」
「…何でも無いよ。…和夏」
「…え?」
…やられた、やり返された。そんな呼び方をして誤魔化された気がする。でも、それはそれで。
部長、今、和夏って。…ドキッとした。もっと言って欲しい。…。
でも、そのうち解るってどういう意味だろう。