押しかけ社員になります!
「どうぞ…」
「…買って来て貰って言うのも何だが。違うんだ」
えー…、じゃあ、単純に飲む珈琲だったの?
はぁ…。正直、仕事の失敗より落ち込みそう。
あ、いけない。では、この飲料の方の珈琲を渡さないと…。
「俺が好きなのはもう一つある別のメーカーの物で、少し苦めのヤツの方なんだ」
あ、なんだぁ、アイスはアイスで正解?…惜しい。メーカーが違ったのか…。
あー、そう言われると確かに二種類あったかも
どっちにしろ、初めから詳しく聞けば良かった話だ。こんなこと、滅多にあることじゃないのに。それも含めて残念な自分にがっかりだ。
「そうなんですね。では直ぐに換えて来ます。それは私が食べま…」
「いいよ、これで。今日はこっちで大丈夫だ。別に子供じゃないんだから。
社員証通しただろ?うっかりしてた。次は俺が奢るよ」
「へ?」
いけない…また間抜けな声が出た。
「んん?次は俺が奢る」
そう言って食べ始めた。
…神様。そして仏様~。天から光が射して参りました。今の、聞いて頂けましたか?
お、奢るとか、何?つまり、また、お昼を共に出来るという事?
…おお、神よ。クリスチャンでは無いが、十字を切りたくなった。
「西野…。西野…。取り敢えず…座れ。どうした。大丈夫か?意識はあるのか?」
そう言って手を上げ、顔の前で、二、三往復程、振られたと思う。
そして、ハッと我に返った私を確認して、フッと笑った。
あっ、もー…、本気で意識を飛ばしていた。
…「すみません…大丈夫です」
恥ずかしいの極み…。
「そうか。これもこれで旨いよ」
「…そうですか」
…あっ、もう…。好きな相手にうっかり気のない返事をしてしまった。…恥ずかしい。…目茶苦茶恥ずかしい。ずっと失態を晒している…。
だってあまりに…怒涛のようなこの展開。
神様。一体部長に何があったというのでしょう?